壷口&<2539;殷墟(ここう&<2539;いんきょ)
「黄色いナイアガラ」と呼ばれる壷口の大瀑布。黄河の治水に取り組んだ伝説の国&<2539;夏の王&<2539;禹の物語。紀元前14世紀に遡る古代国家&<2539;殷の都の跡&<2539;殷墟と現存する中国最古の文字&<2539;甲骨文字。黄河に導かれ、遥かな古代を訪ねます。
西安(1)
黄河最大の支流&<2539;渭水のほとりに残る秦の始皇帝が建設した壮大な宮殿&<2539;阿房宮の跡。始皇帝陵と兵馬俑。匈奴を制圧し、西域に進出した漢の武帝の陵墓&<2539;茂陵。中国を統一し、中国の原型をつくった2王朝の歴史を偲びます。
洛陽
黄河の支流&<2539;洛水のほとり、9つの王朝が都を置いた洛陽。インド僧が建てた中国初の仏教寺院&<2539;白馬寺。仏教美術の宝庫&<2539;龍門石窟。大運河で運ばれた穀物を貯蔵した巨大な地下倉庫。洛陽の繁栄と文化に思いを馳せます。
西安(2)
玄奘がインドから持ち帰った経典を納めた大雁塔。玄宗皇帝と楊貴妃のロマンスの舞台。中国に骨を埋めた遣唐留学生&<2539;阿倍仲麻呂の物語。シルクロードの香りが漂う西安に、世界最大の国際都市だった唐の都&<2539;長安の面影を訪ねます。
開封
北宋の都として繁栄した開封は、暴れる黄河と戦い続けてきた古都。街のシンボル&<2539;鉄塔や、『水滸伝』にも登場する相国寺に往時の繁栄を偲び、黄河の氾濫を防ぐ大堤防に古代から続く黄河との戦いを実感します。
中国の雄大な時の流れを感じるにはなんと言ってもこの巻がオススメ。古代文明は大河沿いに発展してきたといわれますが、中国でも黄河沿いにその悠々たる文明の証を見ることができます。登場する古代中国遺跡も然ることながら、私が特に心奪われたのが阿房宮や始皇帝陵、武帝陵のスケールの大きさ。画面いっぱいに広がる陵墓が、当時の皇帝の強大な勢力を感じさせます。テレビで見慣れたはずの兵馬俑坑も、改めてその大きさを実感し、秦の始皇帝の権力に驚かされました。また、楊貴妃に夢中なって国を危うくしてしまった玄宗皇帝の行動はあまりに悲しく、せつなくなってしまうもの。この真相は本編で究明してください。
四姑娘山(スークーニャンシャン)
パンダと四人姉妹をめぐる物語が伝わる四川省北部にある四姑娘山。その高峰を仰ぐ高原はスイス&<2539;アルプスを思わせる緑豊かな別天地。欧米のプラント&<2539;ハンターを虜にした青いケシなど珍しい高山植物が咲き乱れます。
海螺溝(かいるいこう)
四川省の最高峰ミニヤコンカの氷河&<2539;海螺溝。氷河の水が流れ込む大渡河の上流には、かつて「女帝の国」があったといわれ、「美人谷」と呼ばれています。幻の美人の国を探して、初めてビデオ&<2539;カメラの入る奥地へ旅します。
シャングリラ
イギリスの作家ヒルトンが小説に描いた理想郷「シャングリラ」。その名をとって「シャングリラ郷」と呼ばれる谷が四川省西部にあります。雪を頂く山々を神と崇めるチベット族の人々が暮らす、時が止まったような村を訪ねます。
桂林
宋代の詩人&<2539;王正功が「天下一の山水」と讃えたことから、中国を代表する景勝として知られるようになった桂林。船で漓江を下り、山水画の世界そのままの風景に浸り、鵜飼をはじめ流域の人々の営みに触れます。
長白山と鏡泊湖(ちょうはくさんときょうはくこ)
中国と北朝鮮の国境に位置する長白山は、朝鮮族と満州族が民族発祥の地として崇めてきた聖地。そして、8~10世紀、東アジアに君臨した謎の国&<2539;渤海国とゆかりの深い鏡泊湖。伝説に彩られた自然を東北地方に訪ねます。
『中国大紀行』の映像の美しさを存分に味わえるのが第2巻。中国と言うと「歴史」や「人物」、「お茶」といったイメージを持っていた私ですが、こんなに美しい自然も有しているのかと実感しました。とにかく綺麗。ハイビジョン&<2539;デジタル方式で撮影しただけのことはある、と一人納得してしまいました。また、思わず感動したのは、シャングリラで新しい寺院を作るために、村中が力を合わせている様子とその無邪気な笑顔。現代社会で失われた温もりを見たように思えます。ちなみにこの巻に出てくる、経文を刻んだ「マニ石」は他の巻にも姿を変えて登場してきます。それだけ中国人の生活に宗教&<2539;祈りは密着しているんですね。ぜひ注意してご覧ください。
蘇州
明&<2539;清の時代を通じて中国の経済と文化の中心だった蘇州。知識階級である官僚や文人たちが好んで居を構え、こぞって「園林」と呼ばれる庭園を造りました。中国四大名園に数えられる庭園を訪ね、文人文化の粋に触れます。
杭州
かつて南宋の都として栄えた杭州は、中国を代表する景勝&<2539;西湖の街として知られています。役人として杭州に赴任し、こよなく西湖を愛した2人の詩人、蘇東坡と白居易の詩に導かれ、柳の新緑と桃の花が美しい西湖を巡ります。
龍井(ロンジン)
西湖の南西にある龍井は「百茶の王」と呼ばれる「龍井茶」の産地。味、香り、色、形のすべてが素晴らしいことから「四絶」と称えられる緑茶の秘密を探り、中国独特のお茶の味わい方を指南します。
紹興
紹興酒の産地として有名な紹興。その歴史は、「呉越同舟」で知られる春秋時代の「越」の国の都に遡ります。作家&<2539;魯迅の生家。日本の平安貴族も楽しんだ曲水の宴のルーツなど、歴史と文学の香りが漂う水の都に案内します。
烏鎮 南潯 西塘(うちん&<2539;なんじん&<2539;せいとう)
運河が張り巡らされた江南には、水郷鎮と呼ばれる水運で栄えた小さな町がいくつもあります。3つの水郷鎮を巡り、朝市、茶館、影絵芝居、崑劇など、人々の暮らしと奥深い文化に触れ、水郷情緒を堪能します。
情緒溢れ、しっとりと落ち着いた雰囲気の第3巻ですが、なかでも私が特に好きなのが龍井(ロンジン)のお茶の話。中国と日本、似て非なるお茶を作る工程は非常に興味深く、私たちにとってお茶とは味わって楽しむものですが、中国の人たちにとってお茶は、入れる段階から楽しむものなんですね。透明なガラスの茶器にお茶葉を入れ、温かいお湯によってその茶葉が広がり、沈んでいくようすを愛でる。そんな風流な時間も味わいとする中国人が私はとても羨ましく思えます。また、人間の技とは思えない絹織物の数々も必見です。猿と犬、仲が悪いはずなのに仲良く背中合わせ…中国人の器用さと根気良さには、まさに脱帽。この詳細は本編で…。
泰山
中原で最も高く、最も東にある泰山は古くから人々の信仰を集め、道教の聖地となりました。歴代の皇帝が王朝の完成を報告する「封禅の儀」を行ったのも泰山。聖なる山に登り、古代から現代まで続く中国人の信仰に触れます。
曲阜
「仁」と「礼」を説いた孔子の教え「儒教」は、中国の道徳や政治に大きな影響を与えました。孔子生誕の地&<2539;曲阜に、孔子を祀る孔廟、孔子一族の邸宅&<2539;孔府、孔子一族の墓所&<2539;孔林を訪ね、その思想と人生を振り返ります。
雲崗石窟(うんこうせっくつ)
敦煌、龍門と並ぶ中国三大石窟の一つ雲崗。北魏が西域から連れてきた工匠たちに造らせた石窟は、インドやペルシャなど西方の文化を吸収し、中国が独自の仏教美術を開花させていったプロセスを如実に語ってくれます。
五台山
中国仏教四大名山の一つ五台山。今も、40余りの寺に千人を超える僧侶が修行の日々を送っています。唐代にこの地を訪れた比叡山の僧&<2539;円仁の足跡を辿りつつ、生きた仏教の聖地を巡ります。
ラサ
チベット仏教の聖地&<2539;ラサ。五体投地を繰り返す巡礼者が絶えることはありません。最も神聖な寺&<2539;ジョカンに仏教伝来の歴史をたずね、ポタラ宮にダライ&<2539;ラマの権勢を偲び、修行に励む若い僧たちの信仰の息吹に触れます。
最初に「聖地巡礼」というタイトルを見ただけで、あまり宗教に詳しくない私は、ちょっと苦手意識を持ってしまいました。まあ、それでも仕事!と思いながら視聴しましたが、これがスゴイ! そこには一心に世の中の平和を願う人々の姿が映し出されていて、そのひたむきな信仰心、パワーに圧倒されました。私などは初詣に行ってもつい自分や身近な人の幸せばかり願ってしまいますが、中国という戦乱の絶えなかった国にいたからこそ、この世の平和&<2539;安定を願うのでしょうね。人々の祈りをのせながらクルクルと廻るマニ車やラサの抜けるような青い空、真っ白なポタラ宮の美しい映像を見ながら、思わず感慨にふけってしまいました
トルファン
シルクロードの原住民であるペルシャ系の人々が築いた交河故城。漢族の王のもとで多民族が暮らした高昌故城。そして、9世紀にこの地にやってきたウィグル族の暮らし。様々な民族が織り成すオアシス都市の歴史を辿ります。
ホータン
紀元前の遥か昔、絹の道を最初にキャラバンが運んだものはホータンの玉でした。玉の採掘現場や加工場を訪ね、117歳の長老や珍しいウィグル族の結婚式など、ポプラ並木に囲まれたオアシスの暮らしにも触れます。
カシュガル
中国の最西端に位置し、交易で栄えたカシュガルは、バザールの賑わい、職人街などに往時の面影を色濃く残しています。そのカシュガルからパキスタンとの国境の街タシュクルガンへ向かい、シルクロードの旅を満喫します。
内モンゴル(1)
毎年、大草原で繰り広げられるモンゴル族の夏祭り「ナーダム」。そのメイン&<2539;イベントは2千人以上の力士が参加するモンゴル相撲。優勝者に与えられる賞品はラクダと四輪駆動車。モンゴル族ならではの祭りを楽しみます。
内モンゴル(2)
民族の英雄ジンギス&<2539;ハンの陵。その孫フビライ&<2539;ハンが中国に打ち建てた元の夏の都&<2539;上都の遺跡。ジンギス&<2539;ハンの17代目の孫といわれ、モンゴルにチベット仏教を広めたアルタン&<2539;ハンの居城など、モンゴルの歴史を辿ります。
『中国大紀行』のなかでも「旅してる気分」を最も味わえるのがこの5巻だと思えます。それは東西の交流の原点、シルクロードを辿る旅。西方に進むにつれて人々の様子が東洋系からアラブ系に変化していくことに中国の広大さを実感しました。また、最近日本の角界にどんどん進出しているモンゴル出身力士ですが、ナーダムの祭りでの力士を見ると、大相撲とは違うそのたくましさに思わず見とれてしまいます。入場の際のデモンストレーションはさながら野生動物の威嚇ポーズのようで、大自然のみなぎるパワーを吸収した力士たちが日本で活躍するのにも頷ける話。もう一つ、このナーダム会場での驚くべき警備方法については「撮影秘話」で。
大理
中国と東南アジアを結ぶ西南シルクロードの要衝として栄えた雲南省の大理。住民の大半は商才にも長けたペー族。毎年、旧暦の3月、「三月街」と呼ばれる盛大な市が開かれ、雲南省やチベットから多様な少数民族が集まります。
麗江
万年雪を頂く玉龍雪山の麓にある雲南省の麗江。石畳の路地と水路が美しいナシ族の古都です。世界で唯一現役で使われている象形文字&<2539;トンパ文字、自然を崇拝する独自の宗教トンパ教など、ナシ族の文化を探ります。
石林
奇岩怪石が訪れた人を圧倒する石林。その周辺に暮らすイ族は、虫送り、角隠し、相撲、闘牛など、日本と共通する多くの風習を持っています。10万もの人々が集まる「松明祭り」を中心に、イ族の世界を訪ねます。
黄果樹瀑布(こうかじゅばくふ)
中国一といわれる貴州省の黄果樹瀑布。ここには、水を神と讃えるプイ族が暮らしています。水を表す渦巻き模様をろうけつ染めで描く女性たち。石造りの村を訪ね、若い男女が愛を伝え合った糸電話をはじめ、独自の生活習慣を探ります。
龍勝
広西チワン族自治区にある龍勝の棚田。ここには、日本のお茶漬けに似た油茶を主食とし、長寿で知られるチワン族、女性は一生髪を切らない、長髪で知られるヤオ族が暮らしています。ユニークな2つの民族を訪ねます。
これほどまでに“純粋”という言葉が似合う人々はいないのではないか…第6巻を見始めた私の最初の印象です。見知らぬ土地のはずなのに、なぜかどこか懐かしい。少数民族の村や町並みに、人々の笑顔に、親しみを感じずにはいられません。遠く離れている中国にこれほど親近感を抱くとは思いませんでした。糸電話で恋心を伝え合う恋人たちのはにかんだ姿は微笑ましく優しい。ほかにも色鮮やかな民族衣装、龍勝の棚田など素朴ななかに華やかさを秘めた中国民族の奥深さが伝わる話が収められています。この巻の私のお気に入りは一見すると子供の落書き?のような“トンパ文字”。なんと、現在も使われている唯一の象形文字とは驚きでした。
景徳鎮の磁器
中国最大の磁器の生産地&<2539;景徳鎮。良質な土を産することから、元代以後、歴代王朝の御用窯が造られ、磁器の都として栄えてきました。「粉彩(ふんさい)」と呼ばれる清代に発達した彩色技術を受け継ぐ作家の繊細で華麗な絵付けを追います。
宜興紫砂急須(きごうしさきゅうす)
太湖のほとりにある宜興で作られる紫砂急須は「最高の茶道具」と呼ばれています。硬質な紫砂泥を用い、ろくろを使わずに成形し、釉をかけずに焼く、独特の工法を追い、彫刻刀1本で絵や銘を掘る人間国宝の技を紹介します。
墨と硯(安徽省)
安徽省の屯渓周辺は、10世紀、この地方を支配した南唐が文房具の生産に力を入れたことから、墨や硯づくりが盛んになりました。伝統の技を紹介し、文房具になみなみならぬ関心をもった文人文化にも触れます。
(水墨画(安徽省)
安徽省にある黄山は、水墨画で最も多く描かれてきた山です。30年以上にわたって黄山を描き続けてきた画家の創作を追い、移ろいやすい人の世と違って悠久の時を感じさせる黄山に思いを託す画家の世界を訪ねます。
京胡(北京)
中国の伝統芸能&<2539;京劇の伴奏の要となる京胡。胡弓の一種ですが、歌い手の声や演目に合わせて作り分けるには高度な技術が必要です。50年以上にわたって京胡を作り続けてきた職人の技を紹介し、京劇の魅力にも触れます。
中国大紀行全10巻のなかで、私が個人的に最も好きなのがこの第7巻。とにかく千年以上にわたって伝えられてきた素晴らしい技の数々。最高の墨と硯で描く優美な水墨画や絢爛な京劇に欠かせない楽器&<2539;京胡、そして紫砂急須に押される意味のある落款の話まで、どれをとってもその製作者の思いが溢れ、「はぁ」とため息がこぼれてしまいます。また、技を伝えるということは、技を守ること。ゆえに各地の工房や工場の撮影では厳重な監視のもと、大変な思いをされたと聞きます。熱心に交渉していただいた現地の案内人や、睨みをきかされながらも完璧な撮影を遂行したスタッフには頭が下がります。百聞は一見にしかず、ご自分の目で見て確かめてみてください
大連
多くの日本人の郷愁を誘う大連。その名は、ロシアが「遥か遠く」を意味する「ダーリニー」と呼んだことに由来します。日露戦争の結果、ロシアから街の建設を受け継いだ日本は国の威信をかけて西洋風の街づくりを行いました。
山東半島
秦の始皇帝の命を受け、不老不死の薬を探しに東へ向かった徐福。その一行は、日本に辿り着いたともいわれています。徐福伝説の謎を追い、倭寇と戦った水軍の基地&<2539;蓬莱水城など、日本ともかかわりの深い山東半島を巡ります。
青島
ドイツの租借地だった青島。世界的に有名な「青島ビール」もドイツが残した遺産。ビールに使われる水は、道教の聖地として知られる山の水。中国的なものとヨーロッパ的なものが混ざり合った青島の魅力を訪ねます。
上海
欧米列強が建設した中国のなかの西洋&<2539;上海。治外法権の租界では、阿片を扱う地下組織が暗躍し、中国共産党の第1回大会が開かれました。日本租界も置かれ、多くの日本人が渡った街は、今、日々、変貌を遂げています。
厦門(アモイ)
ヨーロッパ風の美しい街並みが残る福建省の厦門。福建省は華僑の故郷として知られ、厦門からは多くの中国人が海外へ旅立っていきました。華僑の成功の秘密を客家の村にたずね、故郷を思う気持ちを華僑が寄贈した大学に偲びます。
中国と各国の交差点ここにありという感じの第8巻。もちろん、ほかの巻にも中国と各国の歴史的関わりについて触れた話はありますが、特にこの巻では、必ずしも穏やかなことばかりではなかった各国間の史実も取り上げ、考えさせられます。また、ここに登場する5箇所はいずれも一般的にイメージする「中国」とは違った異国情緒溢れる場所であり、そこでの話は日本の弥生文化に関係すると言われる徐福伝説、青島ビールが美味しい理由、世界中へと渡っていった華僑のルーツ等、知的好奇心をそそるものばかり。中国であって中国でない、たくさんの支流を持つ黄河のように、異なる文化も吸収して自分のものしてしまう力強さ、とくとご覧ください
九寨溝(きゅうさいこう)
長江の支流&<2539;岷江の上流にある九寨溝。鏡のように山を映す湖、青と緑がサンゴ礁の海を思わせる湖、真珠が飛び跳ねているように見える滝。100以上の湖や滝が、この世のものとは思えない美の世界をつくりだします。
都江堰(とこうえん)
岷江に造られた古代の水利施設&<2539;都江堰。秦代の科学者でもあった李冰が行った工事は、万里の長城とならんで「古代の大事業」と称され、今もその水は四川省の大地を潤しています。近代の土木工学も手本とする技術を探ります。
三峡
『三国志』の舞台となり、李白や杜甫の詩に詠われた三峡。長江中流の大都市&<2539;重慶から船に乗り、白帝城をはじめとする名所から、支流の小三峡まで旅します。やがてダムが完成すれば、再び見ることのできなくなる風景です。
武陵源
長江中流の南に広がる霧に浮かぶ仙境&<2539;武陵源。林立する3千を超える奇岩奇峰。総延長28キロの鍾乳洞。そこには、古くからこの地でひっそりと暮らしてきたトゥチャ族の悲しい物語が隠されています。
洞庭湖
中国第2の淡水湖で、長江の流量を調節する天然の貯水池の機能も果たしてきた洞庭湖。李白や杜甫など多くの詩人たちの心を癒し、詩に詠まれてきました。伝説と詩に彩られた湖を、人々の暮らしを交えて巡ります。
中国が悠久なる歴史文化を育むことができたのは、一重に“水”のおかげではないでしょうか。黄河流域には文明が興り、澄んだ水は美味しいお茶やお酒を造り、穏やかな湖、無数の河川は水墨画や詩を生み出してきた…、第9巻を見ながら中国の魅力はその豊かな水量が支えていると言っても過言ではない、と思えるのです。なかでもこの世のものとは思えない九寨溝の虹色を映し出す水や、仙境&<2539;武陵源に暮らし、迫害や圧迫を受けてながらトゥチャ族が守ってきた景観は、無粋な言葉で表現してはいけない静謐さえ感じます。澄んだ水の中の気泡まで見えそうな、ハイビジョン&<2539;デジタルならではの映像が水にまつわる話を美しく引き立てています。
北京城
高層ビルの立ち並ぶ北京は、かつて幾重もの城壁に囲まれた城市でした。元代の運河や盧溝橋、明代の城壁、城門の開閉の時を告げた鐘楼や鼓楼など、かつての北京を偲ばせる場所を再発見し、古の北京城を透視します。
紫禁城(故宮)
明&<2539;清の2王朝にわたって24人の皇帝の居城となり、中国の中心だった故宮。皇帝だけに使うことが許された建築様式や装飾から、「天子」と呼ばれ、天から選ばれて地を治める者とされた皇帝という特別な存在を浮き彫りにします。
天壇(てんだん)
明&<2539;清の歴代の皇帝が五穀豊穣を天に祈った天壇。紫禁城では絶対的な権力者だった皇帝も、天壇では身を清めて天の声を聞きました。明代建築の傑作と言われる天壇に、中国の古典的な宇宙観をうかがいます。
頤和園(いわえん)
清の乾隆帝が造り、西太后が改修した離宮&<2539;頤和園。西太后はその費用を海軍の経費を流用して賄ったため、清は日清戦争に負けたと噂されました。西太后が愛した離宮に毀誉褒貶のある人物像を探り、清朝の白鳥の歌を聞きます。
胡同(フートン)
北京の町を網の目のように走る細い路地&<2539;胡同。朝夕に通る物売りの声。鳩の背に笛をつけて飛ばし、その音を楽しむ鳩笛。かつては皇帝も楽しんだというコオロギ相撲。胡同を歩き、昔なつかしい生活に触れます。
現在の中国の首都&<2539;北京。自宅にいながらにして観光気分に浸ってしまったのがこの巻です。なかでも地下鉄の駅名が、かつての北京城の城門の名前だったとはビックリ! 北京の素顔に迫る、街並みや庶民の暮らしぶりの映像も然ることながら、必見なのが映画などですっかりおなじみになった故宮こと紫禁城。まさに威風堂々としたその雄大な姿には、当時の皇帝が持っていた力の程をこれでもかと思い知らされ、驚愕を覚えません。また、特に注意してみていただきたいのは、暴虐政治で有名なかの西太后が、じつは自然や芸術を愛したという意外な一面や、最後に自分の甥を皇帝に据えた翌日息を引き取ったという逸話。死に際して彼女が言った言葉に、彼女なりの苦しみや寂しさを感じ、胸がつまります。